脇の多汗症に対するETS(内視鏡下胸部交感神経遮断術)手術を選択した男性が直面する最大のリスクである「代償性発汗」は、その発生を完全に予防することは難しいとされていますが、そのリスクを最小限に抑えるための予防策と、万が一発生した場合の対策を知っておくことは重要です。代償性発汗の予防策として、まず手術前に「交感神経の遮断範囲を最小限に留める」ことが最も重要であり、脇汗に関わる神経の中でも、遮断する神経のレベル(位置)を低く設定したり、神経を完全に切断するのではなく、クリップで留めておく「可逆的な方法」を選択したりすることで、代償性発汗のリスクを減らす試みがなされています。しかし、これらの予防策を講じても、代償性発汗が起こる可能性は残ります。万が一、代償性発汗が発生した場合の対策として、第一に「時間経過を待つこと」であり、代償性発汗は術後数ヶ月から1年程度で症状が軽減するケースもあるため、まずは焦らず、体全体が新しい状態に慣れるのを待つことが一つの方策となります。第二に「対症療法としての治療」であり、代償性発汗が特に強く現れる部位(例:背中や胸)に対して、塩化アルミニウム製剤などの外用薬を塗布したり、ボツリヌス毒素注射を打ったりすることで、部分的な汗の量を抑える対症療法が用いられることがあります。第三に「精神的なサポート」であり、代償性発汗によるQOLの低下は精神的な苦痛を伴うため、医師やカウンセラーとの連携を通じて、適切な精神的なサポートを受けることも大切です。男性の多汗症に対するETS手術は、その効果の高さと引き換えに代償性発汗という大きなリスクを背負うことになるため、手術の適用は極めて慎重に行うべきであり、手術前に医師と代償性発汗のリスクと対策について十分に話し合い、納得した上で最終的な決断を下すべきです。
男性の多汗症手術後の代償性発汗の予防と対策